個人回想法の実践方法
認知症ケアや介護ケアの方法として回想法が注目されています。回想法にはグループ回想法と個人回想法の2種類がありますが、今回は、個人回想法の実践方法についてご紹介します。
個人回想法の進め方
個人回想法は1対1で行われるものなので、グループ回想法よりも自由に話を広げることができます。グループ回想法の場合は専門知識が必要ですが、個人回想法の場合は専門知識がなくても実施可能です。個人回想法でよく使用されるのは昔の写真です。昔の写真を使用する場合は、あらかじめデジタル化しておくことをおすすめします。写真が整理されていない状態だと、時系列がバラバラでかえって混乱してしまう可能性があります。高齢者のご家族に写真のデジタル化をお願いして、可能な範囲で時系列にまとめておきます。この段階でしっかりとした準備をしておけば、その人に合った話題とペースで回想法を進めていくことができるでしょう。昔使用していたものや子ども時代の玩具、古い映画やレコードなども回想法には効果的です。昔日常的に使用していた生活用具や文具、弁当箱、昔流行していた音楽や映画、ニュース映像なども記憶を呼び起こす助けになります。このとき意識するのは、回想法を行う人が10代のころに触れていたものです。当時食べていたものを当時の作り方で再現することもできるでしょう。「かま炊きごはん」をテーマにした回想法のイベントでは、まきやかま、おひつなど、昔、かま炊きごはんを作るために使用していた用具を使いました。個人回想法では、他の人の好みや話のペースなどを意識する必要がないので、状況が許せばさまざまなことが行えるでしょう。かま炊きごはんほどの手間をかけなくても、昔懐かしいものを見て体験することは可能です。歴史民族資料館や博物館など、昭和の雰囲気を再現している場所へ見学に行ってみるのもおすすめです。
音楽を使った回想法
音楽を鑑賞したり歌を歌ったり、楽器を演奏したりするなど、音楽を使った回想法は認知症ケアや介護ケアにおいて高い効果が期待できる方法のひとつです。病院や介護施設などでも、療法として音楽回想法はよく用いられています。個人回想法で音楽を使用するなら、本人に好きな音楽を自由に楽しんでもらうことができるでしょう。昔懐かしい音楽を聴いたり歌ったりすることで、脳に良い刺激を与えることができます。
回想法を詳しく学びたい人へ
介護職が回想法を実施する場合、正しい知識を身につけておく必要があります。特に注意すべきなのは、実施者の思い込みや偏見が入った自己流の回想法にしないことです。高齢者すべてが同じ価値観や感じ方をするわけではなく、昔のものを見たり聴いたりして懐かしいと思えるかどうかは個人差があります。介護職が回想法に関する正しい知識を身につけるのに役立つのが、「心療回想士」や「認知症ライフパートナー」などの民間資格です。