懐かしい思い出を回想して認知症予防!

元気な高齢者が求められる現代に期待される回想法とは

求められる「元気な高齢者」

認知症ケアや介護ケア、介護予防などに効果があるとされる「回想法」に注目が集まっています。では、なぜ今回想法が注目されているのでしょうか。その背景について考えてみることにしましょう。

求められる「元気な高齢者」

超高齢化社会に進む日本の現状

日本では4人に1人が高齢者で、この先も高齢化は進む一方です。30年後には4人に1人が75歳以上になり、今以上に高齢者ケアの必要性が高まることはもはや避けられない現実です。回想法とは認知症患者のケアによく用いられている手法のことで、発話の増加や表情の変化、情緒安定などさまざまな効果があるといわれています。回想法を取り入れているのは、認知症患者やデイサービスの利用者に関わる介護職、福祉職、看護職など特定の職種でしたが、近年はその幅が広がりを見せるようになりました。
愛知県北名古屋市では、歴史民族資料館に保存されている昔の生活用具を用いて回想法スクールを実施しています。高齢者が昔を懐かしみながら会話を楽しむ場を設けることで、認知症や介護予防につなげています。
この回想法を通じて生まれた人間関係をきっかけに、活動の幅を広げている高齢者も増えています。気力を取り戻し活動的になる高齢者が増えれば、その輪がさらに広がって元気な高齢者が増えることを期待できます。

高齢者が高齢者を支える時代へ

高齢者が増える一方の状況下において、高齢者を支える高齢者の存在が今後ますます重要になってきています。2025年には、団塊の世代すべてが75歳以上になり、3人に1人が65歳となるといわれています。過去を振り返ってみると、1960年代は65歳の方1人を、65歳以下の成人9人ほどで支えている時代でした。2005年には支える人が9人から3人にまで減り、2015年には2人になってしまいました。そこで考えなければならないのは、今若い人たちが健康に歳を重ねていくために何ができるかということです。将来多くの人が健康上の問題を抱えるようであれば、医療費も医療を支える人々も足りなくなるでしょう。元気な高齢者が多ければ、高齢者が高齢者を支えながら社会を維持することができます。高齢者になるとどうしても体力や身体機能が衰えてきますが、長年の経験による知恵は若年層にかなわないものがあります。高齢者の知恵と若者の機動力を合わせて社会を支えられる仕組みがあれば、限りあるエネルギーを必要なところにうまく振り分けられるようになるでしょう。そのためには、元気な高齢者をひとりでも多く増やすよう今から努力しなければなりません。
高齢者の潜在能力を引き出すことにもつながる回想法は、超高齢化社会で生じるかもしれない負担を軽くするために役立つ方法でもあるのです。

回想法を詳しく学びたい人へ

正しい知識を持つ必要がある

正しい知識を持つ必要がある

介護職が回想法を実施する場合、正しい知識を身につけておく必要があります。特に注意すべきなのは、実施者の思い込みや偏見が入った自己流の回想法にしないことです。高齢者すべてが同じ価値観や感じ方をするわけではなく、昔のものを見たり聴いたりして懐かしいと思えるかどうかは個人差があります。介護職が回想法に関する正しい知識を身につけるのに役立つのが、「心療回想士」や「認知症ライフパートナー」などの民間資格です。

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